私は打ち子のバイトを月に4回程度入っていた。あんまり頻度を上げてしまうと店に目を付けられるからという理由でそれ以上は入らせてもらえなかった。それでも胴元はもっと売り上げを上げたいことから私と竜に友達を紹介出来ないかと提案してきた。そしてその友達が入った日には私達には紹介料として5000円くれるという。私たちはその案に飛びついた。私はポンという昔からの友達を、そして竜もタカシという地元の友達を1人紹介した。2人ともスロット経験はもちろんの事、なによりもお金に関して強欲だった。

私たちは2人をミケさんに紹介して打ち子のルールや注意事項を話した。ミケさんでは不安なのでミケさんの前で主に私たちが説明した。ミケさんは横で「うんうん」とニヤニヤしながらうなずいていた。ちなみに私の昔からの友達「ポン」も私の紹介で学生ローンの餌食となっていた。彼とは切っても切り離せない関係で、地元の一番の親友でもあった。彼は昔から頭があまり良くなかったので私は特に注意事項は守るようにと言い聞かせた。そして彼らのシフトも決まり、新たなバイト仲間が加わった。基本打ち子のバイトがあるときは2名体制が多く、2人が同じお店で別々の台を他人の振る舞いで1日打ち続ける。そして帰りに駅で合流して、ミケさんに現金の受け渡しと報告を行い解散する流れだった。私は竜ではなくポンやタカシと入る事もしばしばあった。

そして、4人で打ち子の仕事が順調に回りだした頃、事件は起きた。



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私は何も知らず登校すると、竜が深刻そうな表情で私に近づいてきて突然謝ってきたのだ。「実はタカシがやらかしてしまって」と言うと事の詳細を話してきた。前日はポンとタカシが打ち子のバイトに行く日だった。2人はそこまでまだ仲が良くなかったので現場まで1人で行き、帰りだけ一緒にミケさんに会いにいった。そして帰りの電車は途中まで一緒だったという。後でポンにも確認は取ったので間違いはなかった。しかしその別れた後にタカシにだけミケさんから連絡が入り「ちょっと確認したいことがあるから悪いんだけど一回戻ってこれないか?」と言われ先ほどミケさんと会った所まで1人で折り返して戻ったという。そして待ち合わせ場所に着くなりミケさんともう一人の男に車に乗せられ、北の方面に延々と車を走らされた。そして車は高速道路に入ってそれまで一言もしゃべらなかった男が急に罵倒してきたという。

「お前、何か隠している事あるだろう?正直に言え」とにらみ利かしてくる男にタカシは「何も隠していないです。」と答えた。「嘘つくな。おれは全部知っているんだからな。正直に言った方が身のためだぞ」とさらにタカシを追い込んだ。車は高速道路をものすごい速さで走っている。逃げ道はどこにもないし、何よりもこの空気に耐えられなかったタカシは自身の不正を認めたという。
私は唾を飲み込み、竜に「それで、、、タカシは何をしでかしたの?」と聞くと、タカシはバイト中に上に積んでいた自分が出したメダルを何度かに分けてはバレないと思うレベルのコインを流して現金に換えていたようだった。つまり2000枚積まれているドル箱から100枚ほどつまんで交換、ドル箱が4000枚になったらまた100枚だけ交換するといった形で売り上げをつまんでいたらしい。そしてその夜に胴元が計算したところ明らかに計算が合わない事が発覚してタカシを呼び戻して白状させたという事だった。そして私たちがバイト中にメールのやり取りをしている男こそがその罵倒している運転手である事がわかった。



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その後タカシは散々高速道路で「今ここから降りれば許してやる」「今から田舎の河川敷に行って焼きを入れる」など脅された挙句、何度も謝罪をすると無傷で解放されたようだった。もちろんその日のアルバイト代は没収された。最悪なのがタカシのせいで私たちは事実上解雇となってしまった。私と竜はその日の学校が終わるとミケさんに謝りに行って自分たちだけでもやらせてもらえないか頼みに行ったがミケさんの立場ではどうにもならないと言われてしまった。

私は「なんてもったいない事をしてくれたんだ」と思いつつも、その夜私たちの前で頭を下げるタカシに対しては何も言えなかった。魔が差した事にいちいち文句を言うのも馬鹿らしかったし、タカシが一番反省していると思ったからだ。それでもタカシとは竜づたいで遊んだりした。たまにいじる意味でその時の話をぶり返して笑いに変えた事もあった。

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